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食パンマンの影
(注)
当たり前のことですが、これから書くことはすべて俺の想像です。
真に受けるなんていうおバカな行為はおやめ下さい。
万一しちゃっても責任取れませんよ?
それでもいいなら構いませんが・・・。
食パンマン。
アンパンマン・カレーパンマンと並び、正義の味方として日夜バイキンマンと死闘を繰り広げるヒーロー。
その華麗ともいえる性格・戦いは、敵であるドキンちゃんですら恋焦がれるほど。
罪作りなヒーローである。
ところがこの食パンマン。
カレーパンマンほど、アンパンマンと共に敵と戦うことは少ない。
それどころか出演回数自体がカレーパンマンに比べると、極端に少ないのだ。
「ナゼだろう?」
この疑問を解決するために日夜考えつづけた俺は(バカとかいうな)、ある仮定を想像してみた。
昔のことである。
食パンマンとアンパンマンは、とても仲がよかった。
その理由は彼らの顔にある。
カレーを武器に攻撃するだけのカレーパンマンとは違い、アンパンマンと食パンマンは自分の顔を非常食として、遭難者に分け与えることができるのである。
その頃の食パンマンは今とは違い、アンパンマンと同じように自分の顔を惜しげなく分け与えていたのである。
モチロン毎日バイキンマンが攻めてくるわけではないので、普段の仕事は遭難者の救助に従事していた。
同じ仕事を共有するアンパンマンと食パンマンは、急激に親密度を増していったのである。
彼らはいつも言っていた。
食:「ボクらの顔一つで遭難者が助かるなら、惜しくなんてないよ」
ア:「そうだね、本当に僕もそう思うよ」
食:「ボクらの顔はジャムおじさんが作ってくれるしね」
ア:「うん、これからも頑張ろうよ」
彼らは自分たちの仕事にプライドと、遭難者への深い愛情を持っていたのである。
ただし、食パンマンはアンパンマンに多少の劣等感があった。
パンの質の違いである。
味のないただの食パンに対し、おいしく、栄養たっぷりのあんこを備えているアンパンマン。
彼は正直うらやましかった・・・。
だが、いつかバタコさんが言ってくれた。
「確かにアナタはアンパンマンに比べると栄養が足りないかもしれない。でも、遭難してお腹をすかせている中で見るパンなんて一緒。アンパンだろうが食パンだろうが嬉しいものなのよ」
この言葉を思い出し、そんな自分を恥じると共に、憂鬱気分を払拭することができるのだ。
彼はより一層、この仕事に自身をつけるのである。
そしていつものように、食パンマンはパトロールへと出かけていった。
いつもの巡回コースを一回りし、「よし、異常はないようだ。やっぱり平和がイチバンだな」と言い、パン工場へ帰ろうと思ったその時。
「うわ〜〜〜〜ん」
彼の耳に飛び込む子供の悲鳴。
食:「大変だ!よ〜し、今行くぞ!」
子供の下へと急行した。
食:「お〜〜〜い、大丈夫か〜!」
子:「うわ〜〜〜ん、助けて〜」
食:「ドコだ〜!?」
子:「ここだよ〜〜!」
彼はすばやく子供の下へと降り立った。
食:「もう大丈夫」
子:「怖かったよ〜」
食:「僕が来たからにはもう安心。お腹へってないかい?僕の顔をお食べよ」
子:「なんだ、食パンかよ」
子:「アンパン食わしてくれるヤツがいるんでしょ?そっちの方がよかったなぁ」
彼の信念は崩れた・・・。
しかしボ〜ゼンと立ち尽くすわけには行かない彼は、なんとか食パンで我慢してもらい、救助を完了した。
半ば放心状態の彼であったが、ジャムおじさんに顔を作ってもらうため、パン工場へと足を向けたのである。
いつものように、ジャムおじさんは快く食パンを焼いてくれる。
だが、子供の一言の衝撃はあまりにも大きく、気分の優れない彼は、別室でパンが焼きあがるのをまった。
やがて、おいしいパンを焼くにおいが漂いはじめる。
ジャムおじさんとバタコさんは何か会話をしているようだ。
耳のいい食パンマンは、悪いと思いつつも二人の会話を楽しむことにしたのである。
ジ:「しかし食パンマンにも困ったものだな〜」
バ:「そうですよね〜」
ジ:「あいつの場合、食パン焼いても一斤しか使わないものなぁ」
バ:「ホントにムダですよね〜」
ジ:「いくら人助けといってもな〜」
バ:「アンパンマンの方がマシですよね」
彼はパン工場を飛び出した。
行く当てなどあろうはずもない。
どれほど走っただろうか・・・、息を切らし仰向けになった彼は、腕で顔を覆ったのである。
彼の顔には、幾筋もの光りが伝った。
そして、このことは絶対に忘れないと星に誓ったのである。
次の日から、彼は何事もなかったように仕事を始める。
しかし仕事内容には多少の変化が起こった。
決して顔を分け与えないのである。
アンパンマンは不思議に思ったが、ジャムおじさんは何も言わないので、あえて聞こうとはしなかった。
そのため食パンマンがパン工場へと足を運ぶ確立は、極端に減ったのである。
結果、アンパンマンとの友情も薄れていった・・・。
いや、みずからそうなる様に仕向けたのであろう。
そんな彼だが、アンパンマンを恨むことは一生なかった。
それどころかパン工場の住人にすら、悪意を向けたことはなかった。
彼は常に自分のみを恨み、憎しんだ。
マズくても、正義の味方である。
一人ですべてを背負い込み、孤高のヒーローとなっていったのである。
「これが俺の知ってるアイツの全部だよ」
「あいつぁよ、いっつも自分ひとりでしょいこんでた」
「でも、どうしても抑えきれないとき、俺に少しだけ話してくれたんだ」
「ひょっとしたら、俺のことを親友だと思ってくれてたのかもしれない」
「いや、きっとそうさ・・・。」
カレーパンマンはしみじみとそう語った。
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